認知症について考えてみましょう

<最終更新:2021年11月18日>

 

認知症は決して珍しい疾患ではありません。札幌市の統計では高齢者(65歳以上)のおよそ9人に1人が認知症と考えられており(令和2年10月1日現在、札幌市保健福祉局)、高齢化の進行に伴い、年々増加していくことが見込まれます。

身近な方が認知症と診断されたら、ご家族のみならず、周囲の方々のサポートが必要です。住み慣れた場所で安心して暮らし続けるための1つの事例として、北欧、スウェーデンで実践されている、「オムソーリ」と呼ばれるケアについてご紹介します。

なぜスウェーデンでは認知症が悪化しないのか
5A病棟 看護主任 認知症看護認定看護師 須藤 奉久

 

スウェーデンでは、認知症になっても多くの人が軽度でとどまり、自宅で過ごしているのをご存じでしょうか?認知症ケアの先進国として世界中から注目されているスウェーデンですが、そこには「アンダーナース」と呼ばれる介護スタッフがいます。

 

アンダーナースと呼ばれる方は1日15分「オムソーリ」とよばれるケアを行います。オムソーリとはスウェーデンに古くからある言葉で、「悲しみや幸せを分かち合う」という意味があるそうです。例えば、フレンドリーに接するが、親しき仲にも礼儀あり、のスタンスは貫くこと。また、「クリスマスまで生きたい」という患者がいれば季節外れでもクリスマス飾りをすることなど、感情と入念な心遣いの支援であると言えます。

 

認知症ケアの原則とは、ケアの担い手である介護者の立場ではなく、ケアの受け手である認知症者の立場に立って、問題点を把握し、生活実践の中でその問題解決を図ることにあります。

例えば、認知症の方は記憶障害や見当識障害などさまざまな認知機能障害により帰宅願望を引き起こします。この、帰宅願望が現れた際に介護者が「だめ!危ない!」と反応しても、認知症の方はそれに対し、自己防衛の気持ちが働き、敵意を持ってしまいます。

認知症の方の思いを察するためには、まず本人に寄り添うことが必要です。具体的には、本人を戒めるような言葉使いや態度を避け、「どうしましたか?」と本人に問いかけます。それでも、怒ることや興奮することがあると思いますが、その時でも「どうしましたか?」と問いかけ続けましょう。そこで、認知症の人が「家に帰りたい」と返答したとします。次に、本人の言葉をそのまま受け取り「家に帰りたいのですか?」と繰り返してください。

このように、本人の言葉で質問を繰り返すことで本人から答えが得られ、そこから本人の思いに気づくヒントが得られるかもしれません。

 

日本は目前にある2025年問題を切りぬけるために様々な施策を打ち出しています。しかし、すぐに、2035年問題が訪れます。2035年は団塊の世代が85歳を超えます。日本の現状は、認知症ケアは自然体ではなく管理的で、治療を前提とした治療主体です。このままでは、日本の認知症の方は重度の方が増えていくことは避けられません。

 

紹介したスウェーデンのオムソーリは日本にとっても有益な概念です。私自身も非常に興味があり、コロナが落ち着いた際には、スウェーデンで学習できる機会を得られればと思っています。

そして、当院をはじめ、様々な場所で実践される認知症ケアが少しずつ変わるよう活動し続けていきます。

 

認知症予防に関する医療講座を定期開催しています。看護師や作業療法士が、それぞれの立場でお話ししますので、お時間が合えばぜひご視聴ください。

 

参考サイト

札幌市「札幌市高齢者支援計画2021

 

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